皆様こんにちは。リラ吉です。
ウォルト・ディズニー・カンパニー、通称「ディズニー」は映画やキャラクター、ディズニーランドをはじめとするテーマパーク、ホテルなど、様々な事業に取り組み、そして成功している誰もが知っている大企業です。
今でこそ、世界最大級のエンターテイメント会社ですが、そんなディズニーも90年代に低迷してしまいました。
しかし、低迷していたディズニーはある人物をCEOに任命したことにより、立ち直ります。
その人物こそが「ロバート・アイガー」です。では、彼がCEOになり、ディズニーを立て直すまで、どのような人生を送ってきたのでしょうか?
今回の記事では彼の成功の数々を追体験できる、ロバート・アイガー氏の本「ディズニーCEOが実践する10の原則」をご紹介していきます。
目次
内容
10の原則
著者がこれまでに学んだことを振り返ると、下記の真のリーダーシップに必要な10の原則が浮かび上がってきます。
1.前向きであること
リーダーは前向き、つまり熱意をもって高い目標に取り組まなければなりません。悲観的なリーダーは人々をやる気にさせることが出来ません。
2.勇気を持つこと
変化と競争が激しい世の中では、リスクテイクが必要であり、イノベーションは欠かせません。そしてイノベーションは、人々が勇気を持った時に生み出されます。
3.集中すること
最も重要で価値の高い戦略やプロジェクトに時間と労力を注ぎ込むことが極めて大切です。
4.決断すること
多様な意見を尊重しながら、タイムリーに判断を下し、実行する必要があります。
5.好奇心を持つこと
好奇心は場所、考え方との出会いに繋がります。イノベーションのきっかけは好奇心なのです。
6.公平であること
リーダーは公平に接し、他者に共感できる近寄りやすい存在でなければなりません。
7.思慮深いこと
思慮深さとは知恵を身に着けるプロセスです。思慮深いリーダーの意見や判断は信頼できるし、正しいことが多いです。
8.自然体であること
正直でありのままのあなたでいましょう。敬意と信頼は、嘘のないリーダーによって育まれます。
9.常に最高を追求すること
ほどほどで妥協しないことが大切です。改善の余地があると思ったら、もっといいものにするために力を注ぎましょう。
10.誠実であること
誠実であることは何より大切です。大きなことにも小さなことにも倫理的に高い基準を設けられるかが組織の成功を左右します。
これらの考えは著者の長いキャリアで体験した逸話や事例を読めばより具体的に、身近に感じられるでしょう。
下っ端時代
著者は大学を卒業後、テレビ局のABCで働き始めました。最初はスタジオ管理の仕事で、華やかなテレビの舞台とは違い、いじめなど、今ではクビになっているに違いない行為多い職場で長時間の雑用をしていました。
その後、クビになりそうになりながらも、スポーツ関係の部署に異動し、ルーンと出会います。彼から新しいものや証明されていないものを怖がったらイノベーションはできない事、そして「もっといいものを作るために必要なことをしろ」「最高を追求しろ」という教訓を学びました。
ルーンからはそのほかに、「イノベーションを起こさなければ死ぬ」「出来ないなら他の方法を探して目標を達成すること」「やってはいけないのは失敗することではなく、自分のせいでないフリをしたり、誰かに罪をなすりつけること」ということを学びました。
大抜擢
34歳の時に著者はABCスポーツのバイスプレジデントになりましたが、その後すぐにABCの四分の一の規模であるキャピタル・シティーズ・コミュニケーションズにABCは買収されました。
キャピタル・シティーズ・コミュニケーションズのトップ、トムとダンはテレビビジネスの変化を予見しておりましたし、コスト管理を徹底して、何でもかんでもお金をかけるのではなく、使うべきところにお金を使っていました。
ルーンはトムとダンによって今でやっていたスポーツと報道のどちらか一つに専念するように言われ、報道を選びました。
残された著者が所属するスポーツ部門のトップにトムとダンが指名したのは、スポーツ番組を担当したことのないデニスでした。デニスは知ったかぶりをせず、わからないことはわからないと言い、部下のことを第一に考えている人でした。
デニスがもともと心の広い人物だったのもありますが、この文化を作り上げたのはトムとダンでした。彼らは正直で敬意を持って人と接する人物でした。
著者は自分のことを馴染みのないことでもやり遂げる力があると証明したがる人物だと考えています。そういう意味では経験より能力を重んじ、本人ができると思っている以上の力を求められる仕事を部下に与えるトムとダンは理想の上司でした。
その後トムとダンは著者をABCエンターテイメントの社長に任命しましたが、エンターテイメント業界出身でない人間をABCエンターテイメントのトップに据えるのははじめてのことでした。ですがトムとダンは「君ならできる」とその仕事を与えました。
首位奪還
ABCエンターテイメントのトップに着任してすぐは、戸惑いもありましたが、「やるべきことをやれ」「経験がないということは言い訳にはならない」と心に刻みました。
そんな時にどうするかというと、自分を偽らず、謙虚に知らないことを知るところから始めなければいけません。
トップという立場でも必要なことは聞き、理解できないことははっきり認め、学ぶべきことは努力して早く学ぶことが大切です。本物のリーダーシップとは、自分が何者か知り、誰かのふりをしないことなのです。
著者がABCエンターテイメントのトップだった時、上手くいった番組もあればこけた番組もありましたが、著者が学んだことは努力不足はいけないが、避けられない失敗ならしてもいいと腹をくくらなければ、イノベーションは起こせないということでした。
その後、ABCテレビジョン・ネットワークの社長に就任してすぐ、ダンの引退と共にキャピタル・シティーズ/ABCのCOOに就任しました
ディズニー入社
COOに就任後、キャピタル・シティーズ/ABCはディズニーに買収されました。
自分が社長、つまりディズニーのNo.2になれるかもと思っていた著者でしたが、実際には別の人が選ばれてしまいます。一瞬がっかりしたものの、仕事がうまくいくように努力することの方が先でした。
しかし、社長に就任した人物はCEOの右腕としては不十分で、自分の時間を管理し、他人の時間を尊重するという管理職に必要なスキルをまるでわかっていなかったし、他の人の問題に耳を傾け、解決策を見つける手助けをすということもしなかったため、当然ながら、その社長はクビになりました。
No.2
それから3年間、ディズニーにはNo.2を置かずに経営を続けました。
しかし、1999年の終わりにはずっと1人でディズニーの経営を切り盛りしてきたCEOのマイケルにしわ寄せがやってきました。彼がNo.2を指名したがらないことが、ディズニー全体に悪影響を与えてしまったのです。
著者が休暇中にCEOと取締役数人が夕食を共にし、後継者について話し合った際に、著者を後釜に据えることはないと、CEOは宣言しましたと聞かされましたが、後日著者がら呼び出されて言われたのはCOO、つまりNo.2に任命されました。
内紛
COOに指名された頃、伝統的なメディアの終わりが始まり、世界が変わろうとしている時代でした。
世界が変わっていることを誰よりも体現する存在が、アップルの経営者で、ピクサーのCEOであるスティーブ・ジョブズでした。
ピクサーはディズニーにとって重要なパートナーでしたが、アップルのやり方を非難するなどして、ディズニーとピクサーの(というかディズニーのCEOのマイケルとスティーブ・ジョブズの)関係は悪化していきました。
そのことに加え、同時多発テロが起き、標的にされかねなくなったということや、コムキャスト社がディズニーを買収しようとしていたこと、CEOのマイケルと重鎮取締役ロイ・ディズニーとの対立などがあり、ディズニーは問題が山積みになっていました。
問題が多くなりすぎたことから、結果的にマイケルは2006年の任期満了をもって引退することが決定し、ディズニーはそれまでに後継者を探さなければいけませんでした。
後継者選び
著者がCEOになるには、取締役が求めている変革者だと信じてもらわうために、説得しなければなりませんでした。
著者がやったことは三つの戦略的優先順位を決め、「自分たちの行きたい場所はここだ。そこにたどり着くにはこうすればいい」と伝えることでした。つまり。ディズニーや著者の過去の実績の話ではなく、未来の戦略を話しました。
しかし、ディズニーのCEO選びはなかなか進みませんでした。著者は取締役会、マスコミ等の質問、批判を受け、パニック障害を引き起こしたこともありました。
一連の出来事や世の中の評価を考えると、取締役会が変化を求めて外部の人を指名する可能性も充分に考えられましたが、最終的には著者がCEOに決まりました。
最初の100日
CEOとなった著者は、今後半年の間にやらなければいけないことをまとめました。その中には「ロイ・ディズニーとの和解」「ピクサー及びスティーブ・ジョブズとの関係を修復する」などがありました。
著者はロイ・ディズニーが求めていたのは敬意ということに気づきました。ほんの少し敬意を払うだけで信じられないようなことが起こり、逆に敬意を欠くと大きな損をします。敬意を払うというのは一見つまらなそうなことですが、敬意をもって共感をもって働きかけ、人を巻き込めば、不可能と思えることも現実になるのです。
ピクサー買収
新しいiPodでディズニーのテレビ番組を配信する件について、スティーブ・ジョブズと話し合うようにはなっていましたが、ピクサーの話に応じてくれても、ジョブズが持ち寄る条件はいつも、ピクサーの有利になるようなものばかりでした。
そんなとき、著者はピクサーを買収するという考えを思いつきます。そのことを緊張で汗が噴き出す中、そのことをジョブズに伝えると「あぁ、それならとんでもないってこともないな」と返答がありました。
ジョブズのと会議で、ジョブズはホワイトボードに片側に「メリット」、反対側に「デメリット」と書き、ピクサーを売却するデメリットを余るほど書いていきました。対して著者はメリットを一握りしか言えませんでした。
しかしジョブズは「メリットは少ないが間違いないものだし、沢山のデメリットより重要だ」と述べました。
ジョブズはメリットとデメリットのすべての重要性を推し量り、デメリットの多さに騙されてメリットの重みを、特に彼が成し遂げたいことを見失いませんでした。それこそがジョブズがジョブズたる所以でした。
ピクサー買収をする方向性で進めていた著者ですが、反対意見は少なくありませんでした。しかし、最終的には取締役会を説得、ジョブズから癌が再発した話も聞きましたが、買収は成立しました。
マーベル買収
2008年、良質なオリジナルコンテンツを増やすために、次に買収を考えたのはマーベルでした。
2009年、ようやくマーベルCEOのアイクと話し合う機会を作りました。彼は瀕死になったマーベルを手に入れて、その頭脳と執念で立て直したほどの人物でした。
アイクとの食事などを通じて、話を進めていき、買収することに同意してもらいました。
アイクが同意した決め手はジョブズでした。ジョブズは電話で「ロバート・アイガー(著者)は約束を守る人間」だと伝えたことが決め手となりました。
もちろんマーベルの社員には不安を感じる人間も少なくありませんでした。著者はピクサーを買収した際にも言った、「君たちらしさに価値があるのに、それを変えてしまったら買った意味がなくなる」という言葉をマーベル社員に伝えました。
スターウォーズ継承
マーベル買収を終えてから、ずっとルーカスフィルムは買収候補のトップに上がっていました。
ルーカスフィルムのジョージ・ルーカスの中では、ルーカス・フィルムはピクサーと同じくらい価値があったが、ディズニーにとってはそこまでの価値はありませんでした。いつかそうなる可能性はありましたが、そこにたどり着くまでには何年も努力し、偉大な作品を作らなければなりません。
守秘義務契約を結び、ルーカス・フィルムを調査し、適正な価格を提示、ジョージ・ルーカスは買収価格に合意しました。ただ、問題はジョージの役割でした。
経営者として彼に「好きな映画を好きな時に撮ってください」とは言えません。しかし、スターウォーズをジョージが手放すとは思えなかったのです。
結局、税制の改正もあって、彼は嫌々ながら買収に合意しました。彼にとってスターウォーズという自分の子供同然の手放すことは非常に辛いものでした。
彼の気持ちは痛いほどわかっていましたが、著者は経営者としての責務を果たす必要がありました。しかし、それでも彼には切実に接しました。
これまでのピクサー、マーベル、ルーカス・フィルムの買収に共通していたのは、支配的な所有者と信頼を築けるかでした。そしてその鍵は誠実であるかどうかです。
信頼を築けることでこの3社を買収し、良い関係でいることができたのです。
イノベーションか死か
3社の買収は終わり、自分達のコンテンツをテクノロジープラットフォームを使って直接消費者にコンテンツを届ける時が来ました。
そのためにやり遂げなければならないのははっきりしていました。イノベーションを起こすことです。できないなら生き残れません。
ディズニーはBAMテック社を完全買収し、支配的所有権を取得して、動画配信サービスを立ち上げることを発表しました。それがESPNプラスとディズニープラスでした。
その後、ディズニーは報酬制度の変更など、イノベーションに不要な伝統をどんどん捨てていきました。
正義の代償
イノベーションが業界を変えていることは間違いありませんでしたが、テクノロジーの変化よりも深い意味で社会の姿を変えるような変革が起きていました。
特にエンターテイメントの世界ではハリウッドやあらゆる職場でのセクハラや性別差別に対して行動が起こり始めていました。
ディズニーもまた、社員が安心して働ける環境を作り出し、維持するために、社内の全ての人が意見できるようなプロセスを置き、告発者を守ることを強調しました。
それから半年間は課題が山積みでした。動画配信サービス、人事問題、フォックスの買収に向けての分析と交渉などです。
さらに、ESPN社長のジョンが薬物問題を告白しました。彼は優秀な人物で、失うのは痛かったですが、正しいことをするために、ジョンは辞任、ディズニーはESPNとアニメーションという柱になる2つの事業のリーダーを失いました。
また、テレビシリーズ「ロザンヌ」の主演、ロザンヌ・バーがTwitterで炎上、商業的には存続が正しいですが、人として正しいことをするために「ロザンヌ」の打ち切りを決定しました。
未来への布石
フォックスの買収を進めていましたが、コムキャスト社がディズニーが提示した額よりもはるかに高い額を提示しました。
ディズニーはその額より高い額を提示、買収合意が発表されました。これにより買収の問題も収まり、良いタイミングで配信サービスの情報を株主に公開しました。
最終的には全てのディズニー作品、マーベル作品、さらにシンプソンズをはじめとする買収したフォックスの作品も提供できるようになること、スマートフォンのアプリがどのように動くか、月額料金はいくらなのかなどの説明をしました。
著者がここまで来れたのには素晴らしい指導者との出会いがあったからです。彼らからできる限り全て吸収しました。
著者はミッキーマウスクラブを見て育ち、生まれて初めて映画館に行った際にはシンデレラを見に行きました。そんな著者がディズニーの遺産を守り、次の世代に引き継ぐ立場になったことが信じられないと語っています。
世界中から権力者、重要人物だと祭り上げられても、自分を見失わないことがリーダーの本質です。自分を過信した瞬間、肩書きに頼り始めた瞬間に自分を見失ってしまいます。
人生のどの段階にいても、自分という人物は今も昔も変わらないということを心に留めてること、それが何より難しく、なによりも大切な教訓なのです。
個人的な感想
まず、少し驚いたことがタイトルでした。このタイトルだと、「7つの習慣」のように10の原則についてそれぞれの章で詳しく書かれているのかと思いきや、この本は著者であるロバート・アイガー氏の1974年の下っ端時代から2019年までを追体験し、この10の原則を彼のキャリアを通して理解するという内容でした。
そのような予想と違った面もありましたが、10の原則はもちろんのこと、どのような人と出会い、学び、力をつけていったか、そしてどのように会社を導いたのかを著者の実体験を通して学べる本ため、非常に理解しやすかったです。
また、読んでいて非常に楽しかった本でもあります。著者の人生を追体験できる本なので、続きが気になるのです。電車で読んでいて、目的の駅に着いた時は「この後ディズニーと著者はどうなるのか続きが気になるのに降りなくちゃいけないのか」と思えるほどでした。
特にスティーブ・ジョブズとのやり取りは特に面白く、また参考になりました。ジョブズと著者のような世界のリーダーの考えを私はできていませんが、「このように考えられるようにする」という目標を与えてくれました。もちろんその目標を達成するのは非常に難しいですが、著者の言う通り「熱意をもって高い目標に取り組むことが大切」なのだと思います。
一番参考になったのは、著者のように「地位、立場に関係なく、わからないことは聞いて理解する」「謙虚な姿勢で努力する」「目指すべきところ、やるべきことをはっきりさせる」ことが大切であるということです。これは誰にでもできることではないかもしれませんが、誰もが実践すべきことであると感じました。
あとはこの本に対する投資対効果ですが、定性的ではありますが、これは間違いなく投資額以上の効果があると思います。この本は2310円(2100円+税)でしたが、2310円でリーダーとしての心得や、著者の成功までの人生を追体験は普通出来ません。
読むことをおすすめできるのは、周りから信頼されたい、成功したいと思っている方です。社会人の方のほうが理解、共感は出来ると思いますが、実力をつけ、敬意と信頼を得たいと思っている学生の方にもおすすめできる本だと思います。
まとめ
以上が「ディズニーCEOが実践する10の原則」の内容の要約、感想になります。
ロバート・アイガー氏がどのようにして世界的なリーダーになったのかを追体験できる本であり、彼のキャリアを通じて、大切な10の原則が学べる本です。
面白い本であると同時に、皆様の年齢、立場にかかわらず参考になる本であり、読む価値は十分にあるかと思います。
もしご興味がありましたら、ぜひ読んでいただけたらと思います。
今回は以上です。それではまた。
リラ吉